日本は,人口1人当たりのプラスチック製容器包装の廃棄量がアメリカに次いで世界第2位であり,使い捨てプラスチックを大量に廃棄しているのをご存知でしょうか?
海外ではバラ売りされることが多い野菜も、日本のスーパーでは包装材に入っており、肉や魚にいたっては食品トレーにラップがかけられ、さらにそれをビニル袋にいれてレジ袋に入れて持ち帰る…ということが当たり前のように行われています。
このような背景もあり、最近では環境に配慮してワンウェイ(使い捨て)削減に取り組む企業も増えてきています。
時代が平成から令和に変わって間もない令和元年5月31日、日本政府が「プラスチック資源循環戦略 」を発表したのをご存知ですか?
それによると、「消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与える影響を考慮しつつ、2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器包装等)をこれまでの努力も含め累積で25%排出抑制するよう目指します」と目標が設定されています。
こうした動きのなかで、環境省では、2018年よりごみ拾いイベントへの参加やマイバッグの活用などの個人の行動・アイディアや、自治体・NGO・企業・研究機関などによるポイ捨て・不法投棄撲滅の運動やプラスチックの3Rなどの取組を募る「プラスチック・スマート」キャンペーンを行っています。
キャンペーンサイトを見ると、多くの企業・団体・自治体がプラスチック削減に取り組んでいるのがわかります。事例は数多く紹介されているので、ワンウェイプラスチック削減の取り組みの検討に、ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
ユニリーバ・ジャパンは、製品へのプラスチックの使用自体を減らすことを目標としています。
これまでユニリーバは世界全体でパッケージの重量を13%削減しました。プラスチックの使い捨て削減のために、詰替え用品や濃縮タイプの製品の発売などを進めています。
2019年10月には目標をさらに拡大し、2025年までに
・プラスチックパッケージを100%再利用可能、リサイクル可能、堆肥化可能にする
・非再生プラスチックの使用量を半減する
・販売する量よりも多くのプラスチックパッケージの回収・再生を支援する
としています。
また、製品への使用を減らすだけでなく、循環利用しやすいプラスチックを使うことも心がけ、商品のパッケージにリサイクルしやすいプラスチックを使用しています。
このような活動により、石油からプラスチックをつくるときに比べ、年間1,200トンのCO2削減をしています。
外食産業や消費者向けの動きだけでなく、本業以外の部分でワンウェイプラスチック削減に取り組む動きも始まっています。
三井住友海上火災保険は、2018年に同社本店とMS&ADインシュアランスグループHD本社の社員食堂でのプラスチック製ストローとカップの提供を廃止し、紙製に切り替えを決定しました。
また、同じ損保業界の損保ジャパン日本興亜でも、2018年より社員食堂で、コーヒー用のプラスチック製カップを紙製に変更し、プラスチック製ストローの廃止に取り組んでいます。同社ではこの取り組みで、1日に1000個の削減になるそうです。
ワンウェイプラスチックを削減するために、社員食堂でマイボトル持参を推奨するという取り組みもあります。
京浜急行電鉄は2019年12月初旬から、社員食堂でマイボトルやマイカップを持参してスタンプを貯めると、文具などのグッズやポイントを付与するキャンペーンを進めています。
企業だけでなく自治体でも、プラスチック削減の動きは進んでいます。
東京都が2019年に行った「ワンウェイプラスチック削減キャンペーン」については、当サイトの記事「使い捨てプラスチック削減に向けた東京都と大学キャンパスでの取り組み!」で紹介しましたが、他の自治体でも取り組みが行われています。
神奈川県の葉山町は、「循環型のまちづくり」を形成するため、町民、事業者、行政が連携・協働して「ゼロ・ウエイスト」の実現を目指して
・庁舎や講演、図書館など町が設置管理する公共施設の売店・自動販売機でのペットボトル飲料の販売を廃止
・公共施設への職員によるレジ袋の持込み禁止
・職員向け環境配慮キャンペーン(令和元年度は「職員はマイボトルを使おう!」キャンペーン)を毎年度実施
などに取り組んでいます。
また、埼玉県所沢市は、2018年に市長が「マチごとプラスチックごみ削減」に取り組むことを宣言。市庁舎の一部の自販機でのプラスチックボトル販売廃止、審議会等の会議での飲料をペットボトル飲料の提供から、マイボトルの持参を求めたり、急須等でお茶等を入れたりするなどを行っています。
また、2019年には、環境クリーン部若手職員9名から成るプラスチックごみ削減タスクフォースを設置し、啓蒙活動や給水スポットの設置なども積極的に行っています。
ワンウェイプラスチック削減は、1つ1つの行動は取り組みやすい活動です。ペットボトルではなくマイボトル使用を推奨したり、レジ袋をもらうのではなく、エコバックを利用するように心がけるだけで、地球に優しい活動になります。
ワンウェイプラスチックの削減においては、小さい活動が世界を少しずつ変えていくと思います。現に今プラスチックの消費量が多いのは個人レベルの活動によるものです。ワンウェイプラスチック削減に向け、企業として、そして個人としてできることはないか、日常を見直してみましょう。
(ライター:山田浩平)
<参考資料・記事>
・「「プラスチック資源循環戦略」の策定について」(環境省)
・「プラスチック資源循環戦略」(消費者庁、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
・「プラスチック・スマート」(環境省)
・「プラスチックへの取り組み」(ユニリーバ・ジャパン)
・「社員食堂でもプラ製カップ廃止 1日千個削減の企業も」(朝日新聞)
・「京急が社員食堂でマイボトルに特典、客足も増加」(alterna)
・「自販機のペットボトルやめました 脱プラごみで住友理工」(朝日新聞)
・「はやまクリーンプログラム」(葉山町)
・「マチごとプラスチックごみ削減」(所沢市)