コラムCO2削減

エコドライブとは? 物流・運送での取り組み事例

2024.10.25

地球温暖化に伴う異常気象リスクやエネルギー資源の枯渇リスクが叫ばれる昨今、物流業界では環境対策に配慮した「エコドライブ」施策が急務となっています。燃費がよく排気ガスの排出量が少ない車両を積極的に導入する他、無駄やアイドリング・空ぶかしの禁止やタイヤ空気圧の確認など、ドライバーひとりひとりの心がけで環境に優しい運転を意識する企業も増えました。

今回は、運送業における「エコドライブ」の取り組み事例を紹介します。従業員の意識づけやトレーニングでできるものから、設備投資をして環境ごと変える本格的な取り組みまで、幅広くピックアップしているのでご参考にしてください。

エコドライブとは

エコドライブとは、燃料消費量やCO2排出量を減らし、地球温暖化防止につなげる運転技術や心がけを指す言葉です。環境問題への対策になる他、効率の良いエネルギー効率によるガソリン代の節約、交通事故の予防、渋滞の解消など、多くのメリットがあるとして注目されました。

近年はエコドライブという言葉の範囲も拡大しており、運転技術や心がけだけでなく、環境に優しい車両や物流ソリューションを使うことも全てエコドライブに貢献するという考え方が広がっています。自社の課題に合ったエコドライブができれば、環境問題対策+αの効果を実感できるのがポイントです。

エコドライブとして有効な施策

次に、エコドライブとして有効な施策を紹介します。ドライバーの教育などすぐにでもできる施策も多いので、導入のヒントにしてみましょう。

ドライバーの教育

エコドライブには、環境に配慮した運転を心がけることも含まれます。例えば以下のような運転を意識することは、排気ガスの排出量を減らすだけでなく交通事故の予防やエネルギー効率の最適化にもつながります。

・自分の燃費を把握する
・穏やかにアクセルを踏んで発信する
・車間距離にゆとりを持つ
・減速時は早めにアクセルを離す
・エアコンを最適に使用する
・無駄なアイドリングを避ける
・渋滞を避けて余裕を持って出発する
・タイヤの空気圧をチェックする
・不要な荷物はおろしておく
・走行の妨げになる駐車を止める

このような取り組みは環境省からも「エコドライブ10のすすめ」として推奨されています。ドライバー向けの教育・研修や入社時トレーニングのカリキュラムに盛り込むことで、普段から意識した運転が可能になるでしょう。大規模な設備投資をするのが難しい企業でも導入しやすく、常日頃の意識が環境対策になる手法として確立されています。


【参考資料】
エコドライブ10のすすめ|エコドライブ – デコ活 – 環境省

共同配送の実現

共同配送とは、複数の荷主が共同で配送することで、トラック輸送の効率を上げる手法です。これまではメーカーごとに各店舗への配送が必要であったためトラックの台数もかかる輸送コストも膨らんでいましたが、共同配送が実現すると物流センターや倉庫に複数メーカーの商品が集約されます。その後、物流センターや倉庫から各店舗への配送が進むため、ひとつのトラックに複数メーカーの商品を積載することができ、エネルギー効率も時間も削減できるのが強みです。

特に物流量の多い巨大メーカーであれば単独で倉庫を持つことができますが、それ以外の中小企業やエネルギー削減を重視したい企業であれば、共同配送を検討してみるとよいでしょう。

モーダルシフトの導入

モーダルシフトとは、トラックなどの自動車による貨物輸送を、環境負荷の低い鉄道や船舶などの輸送手段に切り替えることを意味します。環境負荷の低減やエネルギー効率の向上につながるだけでなく、道路混雑の緩和や交通事故の縮小に貢献するのがポイントです。SDGsの観点からも多くの企業に取り入れられている方策で、特に長距離輸送で効果を発揮します。

また、今後は少子高齢化による労働人口減少のリスクに対応する必要もあり、一度に大量の荷物を輸送できるモーダルシフトへの注目が高まっています。荷物の積み込みにかかる時間や輸送時間の延長などの課題がクリアされれば、さらに浸透していくでしょう。

エコ配送車両の導入

電気自動車(EV)やハイブリッド車、燃料電池車を利用することで、CO2排出量を削減する取り組みです。その他、冷凍・冷蔵車に対して適切な温度管理を徹底できるソリューションを搭載したり、AIやビッグデータを解析してドライバーに対して自動で最適なドライビングルートを提示したりするソリューションの開発も進んでいます。「エコ配送車両」というと電気自動車やハイブリッド車を一番にイメージしがちですが、環境対策を意識したツールを搭載している車両もエコ配送車両に当たるとして注目が集まりました。

なお、車両全部を入れ替えるには膨大なコストがかかりますが、AI搭載のナビシステムや温度管理システムであれば比較的安価に導入できるのもメリットです。物流管理システムや荷物のコンソリデーションなども意識して運用すれば、さらにエネルギー効率がよくなります。

エコドライブに取り組む企業事例4選

最後に、エコドライブに取り組む企業事例を紹介します。最新ソリューションを活用して技術面で環境対策を進める取り組みから、社内文化の改善によるコツコツ積み上げる形式で環境対策を意識する取り組みまで幅広いので、以下を参考にしてみましょう。

江崎グリコ|AI配車システムによる車両台数の削減

江崎グリコでは、AI配車システムを導入して車両台数の削減を実現しています。扱う商品の多くがリードタイムの短いチルド商品であり、これまでは低積載と非効率な輸配送が課題となっていました。しかし、AI配車システムによっていつ・どの程度の物量で・どんなトラックを割り当ててどのルートを通れば最もエネルギー効率が高くなるかを瞬時に示せるようになり、環境に優しい運用ができるようになりました。

また、ドライバーの長時間労働改善や休憩時間を加味した業務スケジュールの立案にも効果が出ています。実際にAI配車システム導入後のCO2排出量は18%削減、車両台数は28%削減、ドライバーの労働時間数は18%削減など、高い効果が現れました。積載量の向上効果も期待されている手法であり、持続可能な物流業界の実現に貢献しています。

【参考資料】
「令和4年度物流パートナーシップ優良事業者表彰」において「物流DX・標準化表彰」を受賞しました

クロネコヤマト|2030年までにEV車2万3,500台の導入を計画

物流大手であるクロネコヤマトでは、2030年までにEV車2万3,500台の導入を計画しています。EV車は電気を燃料として走行する車両であり、排気ガスを排出しないのが最大の特徴です。環境汚染物質がないからこそ地球にやさしい車として知られるようになり、2050年までの実現を目指しているカーボンニュートラル社会の実現にも貢献するだろうと期待されるようになりました。

クロネコヤマトではこれまでも輸送方法や距離に合った車両選定に積極的に取り組んできており、既にハイブリッド車、CNG車なども含めた環境配慮車両の導入割合は84%に到達しています。また、小さな荷物は電動アシスト付き自転車をフル活用して地域密着で配送するなど、近距離輸送の実現にも対策してきました。

今後EV車の導入が進むことで、長距離輸送においても環境対策がしやすくなります。再生エネルギーの活用やフェリーによる海上輸送を活用したモーダルシフトにも取り組んでおり、活動事例が大いに参考になる企業とも言えます。

【参考資料】
ヤマトホールディングス|エネルギー・気候 ~気候変動を緩和する~

利根川産業|燃費改善の順位や達成状況を社内共有

利根川産業では、エコドライブ活動に社内チャットを活用し、燃費改善の順位や達成状況を共有しながらドライバーへの意識づけをおこなっています。定期的に燃費データをモニタリングし、結果を素早く全社向けに配信することにより、リアルタイムでの可視化と意識づけができるようになりました。

同時に上位入賞したドライバーを対象に表彰式をするなど、優秀な成果を上げた人を会社として評価する体制を示しています。これにより、「環境に配慮した運転をするのはよいことである」「表彰されるのが嬉しいからこれからも安全と環境に配慮した運転をしよう」というモチベーションを喚起しています。このエコドライブ活動は「一般部門優良認定証」を受賞し、他社にも事例として共有されるようになりました。

【参考資料】
利根川産業がエコドライブの優良事例として紹介されました!

グリーンサービス|ドローンを使った近距離配送の実現

グリーンサービスは医薬品の配送を主に担っている運送会社であり、慎重な扱いが必要な医薬品や緊急性の高い配送などに幅広く対応しています。グリーンサービスではドローンを使った医薬品の配送に着手し、CO2排出量の削減を実現しました。環境に配慮した近距離輸送を実現する方策である他、災害時における物流体制の構築や地方・離島への配送なども期待されています。

ラストマイル(顧客に物を届ける最後の配送区間)にも転用しやすい手法で、小さな荷物の配送や定期便などへ活用する道も模索されています。

まとめ

エコドライブは、燃料消費量やCO2排出量を減らし、地球温暖化防止に役立つ運送手法です。交通事故の予防など環境問題対策以外のメリットも多く、もはや運送業にとって必須の考え方になりつつあります。ドライバーひとりひとりに意識してもらう教育・研修などソフト面での取り組みから、AI搭載ツールの導入やEV車への切り替えなどハード面での取り組みなど、事例も多岐に渡るので自社の課題や予算に応じて検討してみましょう。

また、緩やかな停止・発信や燃費の把握など、運転に関する意識を持つことは運送業やドライバー以外でもできる環境対策です。1台でも社用車がある企業は、地球環境に向けた運用手法を検討してみるのがおすすめです。

(ライター:わたなべ)

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