コラム廃棄物

企業が取り組む廃棄物の「リデュース」 4つの事例も紹介

2024.10.22


現代社会では、1人ひとりの生活だけでなく企業活動からも廃棄物の大量排出が繰り返されています。従来の「大量生産・大量廃棄」型の経済システムは、確かに便利なものです。便利な状態に慣れてしまった社会に、サステナブルな仕組みを取り入れるにはどうすればよいのでしょうか。

今一度取り入れたいのが「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の視点です。日本では、2000年公布の「循環型社会形成推進基本法」で導入されました。次の「3つのR」をすぐに答えられる方も多いはずです。

・リデュース(Reduce)=ごみの発生を抑制
・リユース(Reuse)=再利用・再使用
・リサイクル(Recycle)=ごみをもう一度「資源」として利用

3Rには優先順位があり、この記事で取り上げる「リデュース」は最も重要だといわれています。リデュースに取り組む企業事例と、企業や個人が取り組む方法を解説します。

企業だからこそ取り組めるリデュースとは

企業・団体など集団で取り組むリデュースは、少しの工夫で大きな効果を得やすいです。従業員数200人の中小企業で実施した例を考えてみます。

・マイボトル持参によって「1日につき、1人1本」のペットボトル利用を削減
→1か月で600本のペットボトル利用を削減
→排出抑制ができたCO2量は約65t-CO2(※)

また、事業内で発生するごみをリデュースできれば、消費者・顧客、製品ライフサイクル全体の廃棄物削減につながります。例えば、次のような取り組みです。

・製品製造に使う資源を節約する
・資源を余すことなく使い切り、廃棄物を出さない
・包装・梱包の簡易化、詰め替え・量り売りへの対応
・製品の耐久性を向上させ、買い替え回数を少なくする
・修理・メンテナンスサービスを充実させる
・製造やサービス提供に不必要な工程を省く

近年、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」にも注目が集まっています。3Rが「一定量の廃棄物は発生する」前提に立つ一方、サーキュラーエコノミーは「設計・製造段階から廃棄物を出さない」という発想に基づいた概念です。企業の3Rは、サーキュラーエコノミーに包含された取り組みといえるでしょう。

※「ペットボトル(500ml)」と「マイボトル(ステンレス製)」を1回使用した場合のCO2排出量を比較すると、105.1g-CO₂の差があるため

【参考資料】
マイボトルっていいね! | 二宮町
3Rについて|リデュース・リユース・リサイクル推進協議会
環境配慮設計事例集 | 一般財団法人 食品産業センター

社員1人ひとりが取り組む「3R」

環境省によると、2022年に国内で排出されたごみの総量は4,034万トンでした。国民1人あたり、1日880グラム排出していることになります。少しずつ減少しているのですが、地球温暖化や大気汚染、最終処分場の逼迫状況などを鑑みると、ごみ削減をさらに推進する必要があります。

リデュースが3Rの中で最重要とされるのは、ごみの排出量を減らすには「使用後にごみとなる製品を使わない」のがシンプルかつ効果的な方法だからです。日常生活を送るうえで、個人が実践できるリデュースには、次のようなものがあります。

・買い物のときはマイバッグを持参し、レジ袋をもらわない
・食料品は必要な分だけ買い、フードロスを出さない
・量り売りや包装なしの商品を選ぶ
・マイボトルやマイ箸を持ち歩く
・長持ちする製品を選び、メンテナンスや修理をして使い続ける

このほか、リデュースや3Rを実践しているメーカー製品の購入によっても、間接的にごみの排出抑制に貢献できます。廃棄物削減は、個人や家族単位でも気軽に取り組める環境活動です。

【参考資料】
日本のごみの現状と世界の3R 取組み事例 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
ごみの分別徹底でゼロ・ウェイスト!上勝町に学ぶ自治体の事例 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について|環境省

リデュースに取り組む企業事例

ペットボトル・缶の軽量化に取り組むサントリー

大手飲料メーカーのサントリーグループは、2013年に国内最軽量のペットボトル「グリーンエコボトル」を開発しました。グリーンエコボトルは約11.9グラム(550ml)、2000年に流通していたペットボトル(24グラム)と比べると半分以下の重さです。

サントリーは、20年以上前からペットボトルや缶の軽量化・薄肉化に取り組んできました。また、環境負荷の少ない原料を採用し、リサイクルしやすい設計にも工夫をこらしています。グリーンエコボトルも植物由来の原料が全体の約30%を占めており、従来のペットボトルと比べて石油由来原料を40%削減しています。

さらに、梱包には段ボールではなく透明フォルムを採用、ペットボトルラベルにはより薄い「ロールラベル」を用いるなど、運送・消費などの段階でもCO2排出量を半減しました。コーヒーやビールなどの缶の薄肉化、ビール瓶の軽量化も実現しています。

サントリーは、2019年に「プラスチック基本方針」を策定しました。2030年までに世界中の拠点で製造しているペットボトルの原料を「リサイクル素材、または植物由来素材など100%」に切り替えるという目標を打ち出しています。

【参考資料】
資源循環|サントリーグループ
サステナビリティへの取り組み|サントリーグループ
サントリーホールディングス株式会社|一般財団法人 食品産業センター

いち早く「ペーパーレス化」を実行したSoftbank

大手通信サービス企業のSoftbankは、2012年から業務のペーパーレス化を進めてきました。

ペーパーレス化前の2011年度、Softbankグループ全体で使用される紙は約3.3億枚でした。このうち、オフィス内で完結する書類は1億枚、顧客の申込書類は2.3億枚に上ります。

そこで、Softbankでは約2万人の従業員全員にiPhone・iPadを支給しました。スマートフォンなどの製品に同梱する書類をアプリにまとめ、利用者への請求書もオンラインでの案内に切り替えました。その結果、オフィス用書類は1,000万枚と約1割にまで削減、顧客用書類は電子化によってゼロになり、9割以上の紙使用量削減を達成しています。

さらに、ペーパーレス化によって約2,000人の業務自動化、業務委託費95億円削減など、大幅なコストカットも実現しました。この取り組みやコロナ禍が後押しし、人事採用へのAI活用などさらなるDXを推進しています。

【参考資料】
場所に縛られない働き方へのさらなる前進。ソフトバンクの押印電子化プロジェクト|ソフトバンクニュース
官民DXに共通点はある? 〜効率化を実現する第一歩としてのペーパーレスと押印撤廃〜|LODGE(LINEヤフー株式会社)公式note

株式会社クラダシの「フードロス×消費者」マッチングサービス

株式会社クラダシは、2015年から消費者と廃棄予定の食品のマッチングサービス「Kuradashi」を運営しています。さらに、商品にそれぞれ支援金額を設定し、購入者が社会貢献活動団体に寄付できる仕組みを作りました。

フードロス問題は、日頃からよく目にする社会問題です。2021年、日本のフードロス総量は523万トンでした。このうち、家庭から発生する廃棄食品量が244万トン、食品関連業者の事業から生まれる廃棄食品量は279万トンです。食品流通業界では、納品期限・販売期限を過ぎたために賞味期限前に廃棄される商品のように、サプライチェーン上で大量のフードロスが発生しています。

Kuradashiでは、賛同企業から協賛価格で提供を受けた廃棄予定の商品を、消費者が手頃な価格で購入できます。農水産品の規格外品、売れ残りの農産物も取り扱うことで、農業・漁業従事者の事業成長・雇用促進も支えています。「食料品の買い物」という生活の一部で、誰でも社会問題の解決に貢献できる仕組みです。

【参考資料】
Kuradashi
About Us | 株式会社クラダシ
食品ロスを削減する社会貢献型 フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI.jp」|環境省 グッドライフアワード
最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに|農林水産省

Nature Innovation Groupのシェアリングサービス「アイカサ」

株式会社Nature Innovation Groupの「アイカサ」は、2018年に開始した日本初の傘のシェアリングサービスです。

ゲリラ豪雨の発生が増えてきた近年、突然の雨のために購入したビニール傘がその後すぐに捨てられてしまう「傘ごみ」の問題が明らかになってきました。日本で1年間に消費される傘のうち、6割以上がビニール傘だといわれています。アイカサは、必要なときだけ傘を利用して返却することで、使い捨てビニール傘の削減につながるサービスです。

アイカサは、首都圏や関西を中心に全国1,6000か所以上の「傘スポット」を設定しています。傘スポットで借りた傘は、使用後に最寄りの別の傘スポットに返却できる仕組みです。各スポットは専用アプリにマッピングされているため、利用者は最寄りの傘スポットをすぐに見つけられます。

使い捨てビニール傘と比較すると、アイカサは1回の利用で約692グラムのCO2を削減できます。2022年度は、約19万2,000キロものCO2削減相当量を達成しました。アプリ登録者数は55万人を越え、対応エリアも続々と拡大しています。

【参考資料】
アイカサ
9/26、京成電鉄の首都圏内14駅で「アイカサ」を提供開始。計15か所にレンタルスポットを設置。|PR TIMES
傘のシェアリングサービス「アイカサ」|環境省

まとめ

3Rのうち「リデュース」に注目した企業事例を紹介してきました。

個人や家族単位でも気軽に取り組めるリデュースは、企業単位で実施すると大きな力になります。ペーパーレス化やマイボトル・マイ箸の持参推奨のように、オフィス内での小さなリデュースも積み重ねると大きな廃棄物削減・コストカットにつながります。

また、自社事業にリデュースの視点を組み込むと、消費者・顧客をはじめサプライチェーン全体での廃棄物削減を実現できます。「ごみを出さない」と意識することで、新たな展開が生まれるかもしれません。サステナブルな取り組みは、社会全体や環境のためだけでなく自社事業を続けるためにも大きなポイントとなっているのです。

(ライター:佐藤 和代)


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